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今年(2011年)5月。コーヒー生産国のひとつである中央アメリカのホンジュラスに行ってきました。今回のホンジュラス訪問の目的は5日間にわたって行なわれたスペシャルティコーヒーの国際品評会「カップ・オブ・エクセレンス(通称COE)」に国際審査員のひとりとして参加するためです。
 
毎年それぞれのコーヒー生産国で行なわれているこの「COE」。ヴォアラ珈琲のラインアップでもお届けしている「COEシリーズ」ですが、「COEって何だろう?」と思われているお客様もいらっしゃるとおもうので今回のCOEのレポートを兼ねて簡単にご説明します。
 
私共がヴォアラ珈琲で取り扱っている「スペシャルティコーヒー」と呼ばれるコーヒーは、「種からカップまで(From Seed To Cup)」と言われるように「コーヒー栽培の最初のステージからお客様の目の前にお飲物として提供する最後のステージまで」、全てのステージにおいてスペシャルティコーヒーであるための基準を満たすために、関わる人々の情熱とたゆまぬ努力によって丁寧に育てられ取り扱われているコーヒーです。また、何を(品種)誰が(生産者)どのような環境で(土壌、標高、気候など)どのように(生産処理方法など)育てたかを明確に知ることができること(トレーサビリティ)もスペシャルティコーヒーの特徴のひとつです。
 
こうして大切に育てられたスペシャルティコーヒーの中から、その生産国の品質の高さと風味の素晴らしさを代表する「その年最高のコーヒー豆」を決めるのが毎年各生産国で開催される国際品評会「カップ・オブ・エクセレンス(COE)」です。つまりこの「カップ・オブ・エクセレンス」を受賞(=高得点を獲得)するということは、その年のその生産国を代表する素晴らしいクオリティーのコーヒー豆であると公に認められることなんです。
 
この「カップ・オブ・エクセレンス(COE)」には明確な評価・採点基準があり、どの生産国で行なわれるCOEもこの共通の基準によって評価・採点が厳正におこなわれます。採点において政治的またはビジネス的な利害関係はなく、純粋に「カップのクオリティー=コーヒーの品質」のみによって評価されるため、すべてのコーヒー豆は最後まで農園や生産者を伏せたうえで審査が行なわれます。
 
 
コーヒー豆をこの「共通の基準」をもとに採点・評価・審査できる技術をもつ人をわたしたちは「カッパー(Cupper)」と呼んでます。ワインの世界に「ソムリエ」と呼ばれるワインのプロフェッショナルが存在するように、コーヒーの世界には「カッパー」が存在し、それぞれのコーヒー豆の風味を非常に細かく分析し、「共通の基準」をもとに採点し、そのコーヒー豆の特性を明確に表現します。カッパーはその採点・評価に安定性を求められるため、非常に高い技術が必要とされます。本来優れた味覚を持っていたとしても、多くの訓練なしにはカッパーとしての技術と安定性を認められることは難しいでしょう。
 
弊社ヴォアラ珈琲の井ノ上も、国際審査員カッパーとして認められ、これまで多くの生産国の品評会に参加しております。私は、昨年エルサルヴァドールで行なわれたCOEで、初めて「オブザーバー」という立場で、国際審査員の方達と一緒に「カッピング」をする機会をいただきました。「オブザーバー」も国際審査員と同じように「カップを取り」、採点をしていきますが、その点数や評価はそのときの審査にはカウントされません。しかし「オブザーバー」のときの採点・評価から、カッピング技術とその安定性が認められると、次回の審査から正式な国際審査員として申請をすることが可能となり、国際審査員に選ばれるチャンスが与えられます。私も今回このチャンスをいただき、初めての経験ということもあり緊張もしましたが、COEに集められた素晴らしいコーヒー豆たちひとつひとつと全力で向き合うことができました。
 
今回はニカラグアのロス・アルトス農園の農園主でもあるヘッドジャッジのErwin Mierischさんを筆頭に世界8カ国から18人の国際審査員、世界3カ国から4名のオブザーバー、合計22名のカッパーたちが集まり5日間にわたって審査がすすめられました。限られた時間のなかで、それぞれのコーヒー豆を的確に分析し採点していく作業は、強い集中力と体力を必要としました。採点のあとでカッパー達がそれぞれの意見を共有する場では、表現力とコミュニケーション能力が求められます。そこではみんな本当に真剣に採点をし、話し合いをします。それはわたしたちが関わるスペシャルティコーヒーの向上にみんな真剣であるからということはもちろん、この審査の結果が、生産者の今後を左右するという責任を担っているからです。COEに出品してくる農園はどこも、努力と情熱をもって真剣にコーヒーを作っている人たちばかりです。その努力と情熱の結果としてのコーヒー豆の品質に対して、いかに的確でフェアーな評価を与えることができるかというのはカッパーとしての大きな責任です。
 
 
このCOE審査後にインターネット上で行なわれるオークションには世界中からバイヤーが参加し、COEの審査で高得点を得たコーヒー豆は高価格で落札されることもしばしばです。このオークションによって生産者がバイヤーと直接取引が可能になることもCOEの特徴のひとつと言えるでしょう。
 
COE以前は、生産者は仲介業者にコーヒー豆を卸し、仲介業者が決めた額を支払われるだけでしたが、その金額は決して生産に関わる人々の生活を支えるのに十分とは言えないことがほとんどでした。またコーヒー豆は農産物であることから、その年の気候にも大きく左右されます。生産者にとっては経済面の不安定さから、コーヒーを栽培するのに素晴らしい環境を持ちながら、適切な設備投資をすることが出来ないために高品質のコーヒー栽培にじゅうぶんにコミットできないというジレンマが長い間あったと思います。スペシャルティコーヒーの概念とCOEというプラットフォームの出現は、このコーヒー生産をめぐる経済のシステムを変え、生産者がコーヒー栽培に対する努力と情熱の結果に見合った収入を受け取ることで、生産に関わる人々の生活を長期間にわたって支えるだけでなく、高品質の栽培を維持し、さらに品質を向上させるための設備投資を可能にするなど、生産者にとって健全でサステイナブル(持続可能)な経済的循環をつくり出したとも言えます。
 
 
今回のCOEでの経験は、コーヒー生産者たちの努力と情熱の結晶である素晴らしいコーヒーにそのコーヒーを育んだ土地で出会い、また世界中から集まったコーヒーのプロフェッショナルとともにカッパーとしての意見を共有できたとても貴重なものとなりました。この経験から、コーヒーの素晴らしさを日々の接客のなかでお客様にお伝えすることで、素晴らしい循環をつくるコーヒーの大きな円をつなげられることができたらいいなと思っています。
 
最後に。ホンジュラスは素晴らしいコーヒーをつくり出すための素晴らしい土壌と自然環境をもつ国でした。今後COEなどを通してその可能性を多くの人に知っていただき、生産処理の設備などが充実していくことで更に素晴らしいコーヒー生産国へと成長していくのではないかと感じています。是非、みなさんもCOEに注目してみてください!
 
中摩麗
バリスタ/ロースター/カッパー